ーーー私たち人間が通る「さんぽ道」と、森や草むらを動物たちが通ることでできる「けもの道」。

アートコートギャラリーでは、人と動物が混ざりあい・遊び・暮らす、愛嬌溢れる陶作品を手掛ける山野千里の個展を開催します。

手のひらにおさまるほどの小さな世界。山野千里は、日々の生活で見る場面、人や動物のポーズ、夢の記憶などをイメージの源に、“日常”と“非日常”をミックスさせた空想世界をつくり出す、注目の現代陶芸家です。即興的な指先の動きで粘土をつまみ、捻り、姿を現したモチーフから、さらにイメージの連想を言葉遊びのように重ねて制作。マケットづくりのようなライブ感覚で、作品の方向性はこうしたプロセスの中でしばしば偶発的に発展していくといいます。

優れた独創性によって、スケールも自由に新たな関係を結んでいく人、動物、植物たち。各々のフォルムを彩る淡い色調のリズムに誘われながら、見る者はユーモアとほほえみに満ちた世界とその物語の続きに胸が弾みます。そして、《エリマキ城》《シマリス級肩車タイトルマッチ》《犬人ランド大皿》など、ユニークの際みであるタイトルも山野作品の魅力の一つと言えるでしょう。

本展では、新作の陶立体をはじめ、絵皿、切り絵による作品など、約15点を展示します。「散歩をしているとけもの道を通る動物と時々出会う」という経験をもとに、それぞれの道を“日常”と“非日常”に見立てた「さんぽ道 けもの道」は、自然豊かな瀬戸内の島を拠点に近年制作する山野作品の今を象徴的に表すものです。“日常”と“非日常”が出会い、文化と野性が交差する、ある道の物語のようなユーモアとウィットに富む空想世界をどうぞお楽しみください。