木村太陽「55 Bethune Street, NYC」
2014.12.12[fri] - 2015.1.24[sat] *日・月・祝休廊 *冬期休廊:12.28[sun] - 1.12[mon]
この度、アートコートギャラリーでは、世界各地で発表を続ける注目のアーティスト、木村太陽による個展を開催いたします。 木村が扱うメディアは立体、映像、インスタレーションなど多様ですが、その表現に一貫しているのは、身近な日用品あるいは風景を素材として、 日常に潜む違和感や「負」の現象を独特のユーモアと鋭さであぶりだし、鑑賞者の直感的な反応を引き出す奇妙な引力です。 愛らしいクマのぬいぐるみの体表一面に縫い付けられたイヤホンから聞こえる話し声や笑い声、鳥小屋とネズミ捕りが交互に組み合わされ た彫刻、ファッション誌のページに増殖する無数の目...。木村の作品が纏うおぞましさ、小学生の悪ふざけにも似た仕掛けと風体を目の前にして、鑑賞者は反射的に笑い、また、拒絶反応を示します。そこに湧き起こる得も言われぬ複雑な感情や生理感覚を掘り下げていくことは、社会に蔓延する偽善や無関心に意識を向け、あるいは普段の生活のなかで気づかないうちに鈍麻されている自分自身の神経を再検証することにもつながります。 この世界と自らの内に宿る不条理を本能的ともいえる感覚で嗅ぎ取り、作品を生み出す木村にとって、あらゆる経験の基盤となる身体とそこに生じる生理作用は中心的な主題であり、ときに過激なまでに直接的な表現で作品中に登場してきました。近年、木村は、そうした身体についての考察をさらに深め、存在の容れ物としての身体、そこに蓄積される記憶や意識、身体をとりまく時間・空間、そして死=身体の消滅といったモチーフとそれらの関係性を探る存在論的なアプローチから制作をおこなっています。
過去にいた場所が意味もなく脳裏をよぎることがあります。その空間や、そこの人の往来の流れがなにかを語りかけようとしているのかもしれません。 そんな場所から感じるものを再現するべく作品を制作することがあります。 昨年一年滞在したニューヨークという街は、世界の中心になるべくしてなったんだと思わせる特別なものがありました。滞在最後の2ヶ月は、奇妙に長い廊下で幽霊みたいな老人ばかりとすれ違うアパートで過ごし、その場所に導かれるようにしてビデオの制作をすることにしました。いつもの明確なコンセプトを求めた制作方法を変えて、自分は媒体に徹するべく、その空間にただ身をまかせるように直感だけを頼りに制作しました。
(木村太陽)
本展では、昨年一年間のニューヨーク滞在において制作された映像による最新のインスタレーション作品を中心に、これまでの立体作品などを交え、木村太陽の「現在」をご紹介します。
関連イベント
- 12.13 [sat] 14:30〜16:00
対談 [北出智恵子(金沢21世紀美術館 学芸員)× 木村太陽]
*要予約(Email: info@artcourtgallery.com または Tel: 06-6354-5444まで) - 12.13 [sat] 16:00〜17:00
レセプション