ARTCOURT Gallery

Exhibitions

東島毅展「みずの自画像」

2014.10.04 [sat] - 10.25 [sat] 11:00〜19:00 ※毎土曜日は、 17:00まで

 光や空気のゆらめきから見えない何ものかを感知して、言葉では表意できない色彩を無からすくい出すように、自らの身体をバロメーターに絵画表現の可能性を追求し続けるペインター・東島毅(1960〜)。
 筆致の堆積に浮かぶ濃紺やシルバー、黒や赤紫といった色彩のテクスチャーが、表象と物質の間から湧き出るカオスのように立ち上がる。絵画の表面にやわらかな光の階調と陰影をまとわせ、水鏡のように光を吸引し、反射して見る者の意識を翻弄する。視界におさまらないほどの大きな絵画は、自然に溶け込み雨や雪をその肌で受けていく・・・。そうして、近年の東島の意識は自ずと外へ、より外へと向かう制作へと捧げられ、現実の中に独自の「絵画空間」を構築してきました。

 そして今、東島は自分の内に立ち返る節目に来ていると言います。アートコートギャラリーでは、東島のその照準とぴたりと合わせ、自画像をテーマにペインティングを中心とする個展を開催いたします。《Untitled》(1988)や、80年代後半から90年代前半の未発表作に最新作を織り交ぜ、東島の美の核に限りなく近付いた絵画空間の創出を試みます。

1988年より、ロータリ―財団奨学生としてロイヤル・カレッジ・オブ・アートに在籍したロンドン時代。その渡英後すぐに描いたという《Untitled》(1988)は、シルバーグレーの霞がかる光に、青い人影、振りかざされた巨大な腕、粉塵をあげる黒い柱のような形から、さまざまな情景が想起される一枚です。「ここ(ロンドン)ではじめて本気で絵を描き始めたという実感」を持った東島にとって、《Untitled》は絵描きとしての最初の自画像として位置付けられる重要な作品です。また、NYに滞在した90~97年には、ジュリアン・シュナーベル(80年代ニューペインティングの旗手)のアシスタントを勤めながら、意欲的に画面をスケールアップさせ、クロスやタイルによるコラージュ、合成樹脂の分厚い皮膜を浮かべるなど、絵画の表面を意識した作品を次々と生み出していきました。  
 東島は、イメージをインスピレーションの沸くままに画面へと落とし込み、描いていくと言います。それは、イメージの形象を追うというよりも、描く過程の痕跡のレイヤーによって成り立つ絵画です。時間や場の環境を取り込み、黙々と画面へと向かい自身の美に執着する、ありのままの東島毅とは...。本展は、約30年に渡って続く制作テーマ「曖昧な美徳 ambiguous virtue」をめぐる新たな序奏ともなることでしょう。どうぞご期待ください。

関連イベント

  • 10.10 [fri] 18:30〜20:00 ※要予約[E-mailまたはTelにて]
    鼎談 保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員)×東島毅×柳澤顕(個展同時開催)
  • 10.10 [fri] 20:00〜21:00
    レセプション・パーティ

出展作家

東島毅