新平誠洙「Phantom Paint」
2025. 3.22 [sat]− 4.26 [sat]11:00−18:00[土曜日 −17:00] 日・月 休廊
【作家ステイトメント】
学習が不十分なAIは、歪んだ画像を生成する。初めてその異様な画像を見たときは新鮮さを感じたが、同時に妙な既視感も覚えた。
画像生成AIは人間のニューロンの働きを模して作られている。そのコピー元の人間の一人である自分が、このAI画像に既視感、望郷のような感覚を抱くことに不思議はない。この感覚のシグナルを辿っていくとニューロンネットワークの奥地に隠された個人の、あるいは人類のルーツに触れることができるのではないかと考えた。
今回の制作では、敵対性生成ネットワーク(GAN)と呼ばれる画像生成技術を使っている。GANは贋作師と鑑定士のいたちごっこに例えられているように、画像の生成と識別を交互に繰り返す仕組みによって精度を上げている。これにならい、人間を散々模倣してきたAIを自分も模倣し返すという取っ組み合いを繰り広げ、うっかりブラックボックスの扉が開くことを期待している。
新平誠洙
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アートコートギャラリーでは、新平誠洙(b.1988)の新作個展「Phantom Paint」を開催します。
絵画を描く中で発生する複数の時間軸や、イメージや色彩の重なりがもたらす空間の歪み・分裂といったノイズ現象に着目し、新平は学生の頃より視覚のメカニズムや認識とのブレを意識した制作を行なってきました。そこに自らがリアリティを持つ社会事象やテクノロジーを結びつけ、現代における絵画の時間と空間表現を探求し続けています。
二つの異なるモチーフを曖昧に重ねて描く《Reflection》シリーズでは物事が対照的な側面をもつ二重性を問い、人物や動物をコマ撮りアニメのように描く《Inversion》シリーズでは絵画の虚構世界と現実との存在優位を反転させるなど...。新平は絵を見ることで動く人間の心の存在に関心を寄せ、「見る」欲求を刺激するビジュアルを自らの絵筆で生み出してきました。
「始まりは、AI生成画像が世に出てきたこと」。画家が描く絵と遜色ない画像を生成するAIの登場により、好奇心と廃業の危機を感じたという新平は、AIの画像生成プロセスと向きあいながら新たな制作に取り組むようになります。人間が描いてきた多数の肖像画をAIに学習させ、そのAIが作り出す画像を、画家の伝統技術に則り新平が真似して描く。実在せず身体も持たない肖像画を《Phantom Paint》と題し、本展より新たなシリーズとして発表します。
新平は、AIの学習には脳細胞の働きを模したニューラルネットワーク技術が用いられていることから、絵を描く行為を通して、AIと自分の脳細胞との間に共通点や発見を見出そうと試み始めています。新平が描くモデルは、学習時間が短いAIが作り出した画像生成中の(人物画と思しき)イメージです。本展では、昨年から今年にかけて描いた12点の作品を展示します。
AIと生活する時代に入り、私たちのものの見方、これからの絵画のあり方にどのような影響として現われていくのでしょうか。視覚や脳細胞の複雑なメカニズムの科学的な知識を改めて学習し、この問いを考える機会として、本展では視覚脳科学者の藤田一郎氏をお招きし、「アート、AI、脳、そして私」をテーマにトークイベントも行います。
関連イベント
- 3.29 [sat] 14:00-15:30
対談 藤田一郎(大阪大学名誉教授・視覚脳科学者)× 新平誠洙
(要予約 定員30名 / ご予約はE-mailにて info@artcourtgallery.com) - 3.29 [sat] 15:30-17:00
レセプション