植松永次「庭でみつけた流れ星」
2020.11.14 [sat] - 12.19 [sat] 11:00-18:00(土曜日17:00まで)※日・月・祝 休廊
アートコートギャラリーでは、三重県の伊賀を拠点に、土と火を素材として作品を制作する植松永次(b. 1949)の個展を開催します。
土の存在そのものを感じさせる立体や、植物や水が陶と融合する作品、空間を意識的に使ったインスタレーションなど、植松の制作は、従来の陶芸の枠におさまらない多様さを呈しながら、あくまでも土と火に向き合う透徹した態度に支えられています。
植松の土による仕事は幼少期の土いじりを原点として、「表現すること」に疑問を持った20代に再び土と出会い、「表現しない、つくらない」そして「土の質を確かめる」ことから始まりました。初期には「もの派」やアースワークとの関連で語られることもありましたが、つねに自らが目にし肌身で感じ取るものに立脚しようとする上で、土という素材の扱いや制作プロセス、提示方法など、陶芸のあり方をも相対化する姿勢は、陶芸や彫刻といった既存のジャンルにとらわれることなく、揺るぎない土の佇まいが静けさと情緒を纏う独自の造形を生み出してきました。生活の中で感じる風、光、色、音、その中に宿る生の息吹を土に託し、自らの手、眼と土との対話から見つけ出された形を火によって留める。作者の自己とそれをとりまく世界が土と火を介して一体となったかのような作品は、人間の身体感覚では測れない時間の流れや空間の奥行きさえ感じさせ、それらを前にするとき、私たちは根源的な何ものかに触れたような驚きと懐かしさを覚えます。
植松は80年代初頭、「涸沼・土の光景」展、「土・イメージと形体 1981-1985」展などに参加し、現代美術、現代陶芸の双方において注目を集めて以来、各地の美術館やギャラリーで発表を重ねてきました。2016年、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAでの個展「兎のみた空」では作家の約40年にわたる多彩な表現を緊密に展示することで、その意義と重要性が改めて示されました。2018年には世界最高峰の国際アートフェアFrieze New Yorkにて個展をおこない、2020年12月~2021年2月に兵庫陶芸美術館での個展が予定されるなど、国内外での評価がさらに高まるなか、当廊で初の個展開催となります。
【出品内容】
板状のミニマルな形態と鮮やかに変化する色調が印象的な初期作《加留多》シリーズ(1983~86年)は、土と火、そして慎重に抑えられた作り手の意志が、揺らぎながら均衡を保つ様相を感じさせ、発表当時、新たな陶表現の可能性を示唆して注目を集めました。本展では、同シリーズ最後の制作年となる1986年の陶板を用いて展示を構成します。
また、高さ5mの展示壁面を空に見立て、無数の陶のピースを散りばめる新作の大型インスタレーション《空にキャンディー》は、《加留多》と同じ姿勢、技法にもとづきつつ、年月を経た現在の自己と自然、生活と表現の重なりを、そのまま空間に投影する試みです。
上記2作品を中心に、「土遊び」の身振りを思わせる《流れるように》、粉末状の土を型に入れ焼成した《都市》など、約10点の新作とともに充実した展示構成を予定しています。
【オンライン企画】
下記のコンテンツをウェブサイトにて公開いたします。
▶動画配信;
1. 対談 [出川哲朗(大阪市立東洋陶磁美術館 館長)x 植松永次]
2. 本展会場風景
▶出展作品資料
関連動画
植松永次「庭でみつけた流れ星」会場風景
対談(前半)
出川哲朗(大阪市立東洋陶磁美術館 館長)x 植松永次対談(後半)
出川哲朗(大阪市立東洋陶磁美術館 館長)x 植松永次