ARTCOURT Gallery

Exhibitions

髙木智子・山下拓也 展「他人のセンス」

2015.11.13 [fri] - 12.19 [sat] 11:00〜19:00 ※日、月、祝 休廊

この度アートコートギャラリーでは、新進気鋭の若手作家・髙木智子と山下拓也による2人展を開催します。自分以外の誰か=「他人」の感性や視点を作品の中に大らかに引用し、表現を展開させていく2作家。自らと全く異なる考え方や姿勢を楽しみ、大きな可能性として他者の存在を受け容れる態度には、今私たちが必要としている新しい共存のかたちについてのヒントが隠されているかもしれません。ユーモアを含みながらも日常に潜む漠然とした違和感を鋭く掬いとり、他者との交感を重ねる作品群から放たれるエネルギーを、ぜひご体感ください。

髙木智子は、2015年に京都市立芸術大学大学院油画専攻を修了。本展では、大分県別府市で出会ったモチーフを描いた《ベップ》シリーズの新作群を出展します。 塔の置物とゴリラの人形、ショウケースにずらりと並ぶ招き猫。髙木がモチーフとして選ぶものは、「誰か」が収集し、組み合わせ、飾り付けたものです。髙木はその突拍子も無い構成感覚に可笑しさと魅力を感じながら、配置や印象を忠実に画面に切り取り、流れるような瑞々しい筆致と鮮やかな色彩が特徴的な絵画世界を生み出します。強い色彩が明滅するディテール。重なり合う色と形は物質感を主張し、モチーフの不明瞭な輪郭をじわじわと浮かび上がらせます。「視覚は何を捉えているのか」という疑問を制作の発端に、モチーフ(意味内容と空間)とイメージ(色と物質)の間を探究していると語る髙木の作品では、そのふたつの要素がお互いを創り出す一方で激しくせめぎあい、画面の表層と奥行きの狭間で様々な像を結びます。

山下拓也は、2013年に京都市立芸術大学大学院彫刻専攻を修了。日常を取り巻く対象物を本来の文脈・体系から切り離し、まったく別のシステムへと移植することで、ポップさとまがまがしさ、ゲーム感覚の軽やかさとアイロニカルな視点が綯い交ぜになった世界を創出します。本展では、ネット・オークションに出品されたぬいぐるみや人形の背面写真を収集した《ばいばいの写真》を中心に展示構成します。 山下の表現は、一見ユーモラスな外見を呈しながらも、「場」の構造・「もの」の成り立ちを異化することで、あらゆるものを秩序づけようとする社会のシステムによって普段は周到に隠されている存在の異様さ、物事の無防備な裏側を暴き出します。例えば、小説や漫画といった二次元の虚構世界から三次元の現実の世界へと登場したマスコット・キャラクターを、私たちは実際にはプラスチックや布で形づくられたものに過ぎないと知りながらも、まるで生命と意思を持っているかのように扱います。そこには、相手が虚構であることを了解しつつ感情移入するという矛盾を孕んだ行為―「ごっこ遊び」を成立させる、ある一定の幻想を共有する暗黙のルールが存在しています。《ばいばいの写真》では、そのルールが一時的に解除され、役割を失った人形がたちまち物質となり、「売買のために背面の状態を説明する」という新しい秩序のもとに記録されています。時に背景に演出を加えられ、時に全く無作為に横たえられ、数億枚とネット上に存在し続ける彼らのイメージ。山下は匿名の出品者の斬新で絶妙なセンスに着目しながら、彼独自の視点でそれらを選定し、シンプルな手法でモチーフを取り巻く状況を増幅させて鑑賞者の関心を鮮やかに惹き付けます。

関連イベント

  • 11.13 [fri] 18:00 - 20:00
    レセプション

出展作家

髙木智子、山下拓也